ホーム > JoinT > vol.25

JoinT
トークネットのコミュニケーションマガジン

株式会社 柏屋 代表取締役社長 五代目
本名 善兵衛氏(ほんな ぜんべえ)

[ プロフィール ]
1955年郡山市生まれ。1986年社長に就任し、2012年五代目「善兵衛」を襲名する。2016年から「日本三大まんじゅうサミット」を開催し、その取組みが認められ「2017年日本ギフト大賞・話題賞」を受賞。
まんじゅうを日本が誇る伝統文化の一つとして未来へ継承するため奮闘している。

株式会社 柏屋
本店/福島県郡山市中町11-8
TEL.024-932-5580
https://www.usukawa.co.jp

時代に合わせて変化する老舗
「柏屋の味」への変わらない信用

1852年、奥州街道の郡山宿に門前茶屋として創業した「柏屋」。
初代善兵衛氏が考案した福島名物「薄皮饅頭」を、全国区の銘菓に育てた歴代社長の経営手法はどのようなものだったのか。
五代目本名善兵衛氏に、主力の薄皮饅頭と数々の商品開発の歴史とともに老舗企業の商売の原点について伺いました。

旅人の心と体を癒やす柏屋の商売の原点

『代々初代』。これは、柏屋を継ぐ本名家に伝わる200近くあるという家訓の一つです。

「一代一代が初代の気持ちで、お客さまに喜んでいただける提案をしていくように、という意味が込められています」

そう話すのは現社長、5代目善兵衛氏。柏屋の社長は初代が残した創業の精神とともに、代々「善兵衛」を襲名します。

初代善兵衛氏は、『病に薬がいるように、健やかな者に心のなごみがいる』と街道で茶屋を始めました。そこで売られたのが、あんこたっぷりの薄皮饅頭です。

「薄皮饅頭はたちまち評判となり、他の土地からも菓子職人が作り方を学びに訪れました。初代は、『まごころで包まないと、お客さまに喜んでいただけない』ことを教えたそうです」

お客さまに喜んでいただくための菓子作りは、おいしい薄皮饅頭を作るという誇りとともに、代々受け継がれていきます。

「2代目は頑固な人で、東京のお菓子屋と同じ饅頭を要望する大地主の依頼を変更して、薄皮饅頭を作り続けました。戦中戦後を生きた3代目は、暖簾に恥じるような薄皮饅頭なら作らないと、材料が手に入るまで一切作りませんでした」

伝統の製法でなく柏屋への信用を守る

「『暖簾は革新』という家訓があります。暖簾は守るのではなく塗り替えていくもの。父からは、お客さまに喜んでいただくため、自主的に変えていき、新しさを生み出し続けることが大切だと教えられました」

5代目の父にあたる4代目善兵衛氏は、「包餡機」という機械を発明した人物。肉まんやピロシキなど“包む”技術を要する業界の工業化につながる画期的な発明でした。

「昭和20年代は饅頭がよく売れた時代で、父は休む間もなく働く職人さんに代わるロボットがいればと、10年かけて包餡機を完成させました」

1963年に完成した1号機は、その後も試行錯誤を重ね、実際に稼働したのは翌年。包餡機の導入により、柏屋の生産性は飛躍的に伸びました。

1986年に5代目が社長に就任した翌年、柏屋はさらなる革新に動き出します。

「薄皮饅頭は包餡機と並行して手作りでも生産していました。ところが、お客さまから『やっぱり手作りはおいしいね』と言われましてね。手作りよりおいしい薄皮饅頭を機械で作りたいと開発に乗り出しました」

新たな機械は8年かけて完成し、後に「KDS(カシワヤ・ドリーム・システム)ライン」と命名されました。

「ふつう饅頭は、皮がくっつかないように手粉を付けて包みますが、この手粉が味に影響を与えます。新しい機械では、粉ではなく水で作れるようにしました。皮が非常にしっとりして柔らかい饅頭に仕上がります」

機械で作る薄皮饅頭は、社名を冠し「柏屋薄皮饅頭」とし て、1995年に手作りでは実現できない味として誕生しました。

お客さまの生の声が商品開発の源

5代目は社長就任後、売れ行きの悪かった「どら焼」を新たなコンセプトで改良し、『柏やき』(1989年)として発売。さらに、薄皮饅頭に次ぐベストセラー商品となったレモン風味のクリームチーズタルト『檸檬(れも)』(1991年)など、さまざまな商品開発に取組みました。

柏屋はお客さまの生の声を大切にし、商品開発に活かすために、「客伝」という手法で声を吸い上げています。

「各店舗のスタッフが、お客さまの声を聞きいてメモしたものを、好評・不評・要望などの項目に分けて分析しています。その際のメモは、お客さまの話し言葉のまま書くことが重要です」

今年8月に発売された新商品『花ことば』も、その声を反映して作られました。

「ポイントは、30日の日持ちがすること、米粉を使用していること。アーモンドとバニラ風味の洋風菓子で、飽きのこない味が特徴です」

地域に根差した活動と和菓子文化をつなぐ活動

柏屋は古くから地域に根差した活動を展開し、本店では1974年から「朝茶会」という活動を続けています。毎月1日の朝6時から8時まで、出来立ての薄皮饅頭とお茶が無料で振る舞われる茶会です。

「“おはよう”と“行ってきます”の挨拶が参加資格です。本店2階の『薄皮茶屋』がコミュニケーションの場となります」

また、1958年より『こどもの夢の青い窓』という詩集を発行しています。

「私が3歳の時、4代目が地域の仲間と一緒に郡山を明るく希望の持てる街にしようと、詩人の佐藤浩さんに協力をいただき、子どもの詩を募集して発行し、店の『青い窓』ウィンドウに飾る活動を始めました」

今年60周年を迎えた地域と柏屋をつなぐ『青い窓』。子どもたちの詩をタイムカプセルに納めたり、詩集の表紙でモザイクアートを作ったりして、記念活動が行われました。

「日本のまんじゅう文化を世界に発信し、未来につなげたい」と話す5代目。『柏屋薄皮饅頭』は、東京の『志ほせ饅頭』、岡山の『大手まんぢゅう』とともに「日本三大まんじゅう」に数えられます。2016年4月に、「日本三大まんじゅうサミット」の発起人となり、第1回のサミットを福島県郡山市で開催。サミットは東京と岡山でも継続され、活動が評価されて2017年に日本ギフト大賞・話題賞を受賞しました。

「今後もお客さまに喜んでいただけるものを作り、和菓子の文化を発信し続けたい」と、5代目善兵衛氏の挑戦はまだまだ続きます。

くわしくはこちらを
ご覧ください

JoinT
vol.25 2018
(PDF 27.6MB)

広報誌『JoinT』のバックナンバー一覧に戻る

© TOHKnet Co., Inc.

お問合せ

トークネット光

pagetop