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トークネットのコミュニケーションマガジン

和太鼓奏者
大沢しのぶ 氏(おおさわ しのぶ)

プロフィール
大館市生まれ。10歳より和太鼓を始める。東北おはやし大会、オールジャパン・オタイココンテストなど、全国各地の太鼓コンクールで優勝多数。ソロでは打楽器ユニット天地人、ヒダノ修一太鼓マスターズなどと演奏活動を展開。国立劇場「日本の太鼓」出演をはじめ、フランスパリFICEP外国文化週間、FIFAワールドカップ女子U-20大会開会式など海外公演も多数。併せて、郷土の伝統音楽の継承活動、町内会や小中学校で太鼓指導を行う。

大館曲げわっぱ太鼓アートスタジオタハタ
秋田県大館市池内字上野21-3
TEL.0186-42-3736

曲げわっぱの技から生まれた和太鼓の音を響かせて

曲げわっぱの太鼓を用いて演奏活動を行っている秋田県の創作太鼓チーム「大館曲げわっぱ太鼓」。30年前チーム発足と同時に太鼓を始め、地元大館を拠点にさまざまな演奏活動に参加してきた、大沢しのぶさん。
太鼓とともに歩んできた半生と、郷土への想いについて伺いました。

曲げわっぱ太鼓との出合い

創作太鼓チーム「大館曲げわっぱ太鼓」は1984年、「元気の出るまち」を作ろうと、当時大館市商工観光課に在籍していた田畑準吉さん(現大館曲げわっぱ太鼓会長)の創案で結成されました。

「曲げわっぱ」は、天然秋田杉を用いて作られる大館の伝統的工芸品。この技術を応用して胴を作り、上下に皮を張ったものが、曲げわっぱ太鼓です。この時、田畑さんの要望を受けて、曲げわっぱ太鼓を製作したのが、市内にある柴田慶信商店の現会長、慶信さんでした。

曲げわっぱ太鼓と普通の和太鼓は、その形状だけでなく音色もまったく異なります。一般的な和太鼓の「ドーン!」という力強い音に対し、曲げわっぱ太鼓は「トーン!ポワーン!」という優しい響きが特徴です。「秋田杉はもともと軟らかい木なので、音の響きも柔らかくなるんです」と大沢さん。

「10歳の頃、観光協会に勤めていた母が大館曲げわっぱ太鼓に参加することになり、一緒に連れて行かれたのが始まりです。でも、最初は母たちが練習するのを見ているだけ。和太鼓の『ドン!ドン!』という音が苦手でした。ある日、退屈そうにしていてメンバーの方に促されて叩いてみたら、うるさく感じていた音が全身を包み込むような響きに変わり、とても心地良くなったんです」

より上手く、格好良く

太鼓を叩いた時の爽快感を味わった大沢さんは、会長の田畑さん指導のもと練習に打ち込み、いつしかチームの最年少メンバーとして活動していました。 「より上手く、格好良く叩きたい」。その一心で中学時代は学校の部活動に入らず太鼓に没頭。練習の成果は、中学3年の時に「東北おはやし大会 創作の部」優勝という形で現れました。

「実は前年、同じ大会で2位だったんです。とても悔しくて猛練習した結果だったので本当に嬉しかったですね」

大沢さんはその後、大館市の職員となり、仕事をしながら練習に打ち込み、さらなるチャレンジに向けて励み続けました。そして21歳の時、「富士山大太鼓1本打ちコンクール」と「オールジャパン・オタイココンテスト 個人の部」で優勝。これ以降、個人・団体問わずさまざまな大会で好成績を収めました。

「優勝すれば純粋に嬉しいし、負けるととても悔しい。体に無理がきく若い時に極限まで自分を高める経験ができたことは、その後の人生において役に立っていると思います」

勝つためには、それ相応の努力や労力が必要なこと、技術だけでなく心・技・体を磨かなければならないこと。数々の大会に出場したから実感できたという大沢さん。大会への出場は、自分自身を見つめる機会にもなったようです。

和太鼓奏者としての道

さらに、大会での優勝を機にプロへの誘いを受けるようになりました。

「都会での暮らしを想像して心が揺らいだ時もありましたが、太鼓が生活の糧になっても、それまでと同じように好きでいられるか不安な面もあり、結局、誘いは断ったんです」

好きなままで太鼓を続けたいための決断でした。

自身の太鼓人生において一つの選択をした大沢さん。チームの10代~20代を中心とした「忍組」のリーダーとして、全国各地のコンクールに出場しタイトルを獲得。大館曲げわっぱ太鼓という名も知られるようになりました。同時に、ソロ演奏者として活動する機会も増えていきました。

「元オフコースのドラマー大間ジローさん率いる打楽器グループ『天地人』(2013年卒業)や、太鼓ドラマーとして活躍するヒダノ修一さんのグループに参加させていただき、プロに交じっての演奏からは、たくさんの刺激を受けました」

チームでは、指導やまとめ役として常に全体のことを考えなければならない大沢さんにとって、一演奏者として太鼓を担当し、さまざまなアーティストとの競演は、学ぶことも多いようです。

「上手く叩けることは当然のことで、自分の音をいかに表現するか。舞台上の演出は特に勉強になります。来年はヒダノ修一with太鼓マスターズが10周年になりますから、全国ツアーや新しい企画が今から楽しみです」

心に響く郷土の音

ソロ活動での経験を地元に持ち帰り、取り入れてきた大沢さん。

「叩ければどこでも良いというわけではなく、大館で曲げわっぱ太鼓を叩きたい。大館の良さをPRするだけでなく、自分たちの街は自分たちで良くしていかないと」

太鼓を通して地域を盛り上げることも自分の役割と考える大沢さんは、チーム以外にも地元の小中学校やダイエット太鼓教室などを開催し指導しています。

結成から30年経った大館曲げわっぱ太鼓。長い年月の間には大館を離れていったメンバーもいるそうです。

「進学や就職で別の土地へ行った人もいます。けれど毎年8月16日の鳳凰山大文字祭りで太鼓を叩くために、必ず帰省してくるんです。だからOBたちが帰ってきた時に迎えられるチームに育てていかなくては」

大沢さんは郷土の音をつなぐため、新たな使命感を胸にバチを振り続けます。

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vol.11 2015
(PDF 9.2MB)

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