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トークネットのコミュニケーションマガジン

弘前公園チーム桜守・樹木医
小林 勝 氏(こばやし まさる)

プロフィール
弘前市都市環境部公園緑地課参事。弘前市出身。弘前大学農学部卒業後、種苗会社に就職。その後弘前市公園緑地協会(現・みどりの協会)に勤務し、1992年樹木医の資格を取得。2004年公園緑地課に着任し弘前公園の桜の管理にあたる。現在は全国各地で桜の管理に関する講演や現地指導なども行う。

弘前公園チーム桜守・樹木医
橋場 真紀子 氏(はしば まきこ)

プロフィール
弘前市都市環境部公園緑地課主事。大鰐町出身。弘前の高校を卒業後上京するが、樹木医を志してUターン。1999年から弘前市公園緑地協会(現・みどりの協会)で弘前公園植物園ガイドや、みどりの相談員などを務めながら2006年に樹木医の資格を取得。

弘前市都市環境部公園緑地課
青森県弘前市大字下白銀町1-1
TEL.0172-33-8739

弘前公園の桜に生きる力を
樹木の生命力を引き出し見守る

弘前公園の桜2,600本と管理を後世へつなぐため、昨年「チーム桜守」が発足しました。
そのリーダー役を担うのは桜を守り続けてきた樹木医、小林勝さん。
そして、小林さんを尊敬し同じ道を志した橋場真紀子さん。
桜守のお二人に、毎年美しく咲き誇る弘前の桜への想いを伺いました。

樹齢100年の貫禄と美しさ

弘前城本丸の石垣修理事業に伴い、十数本の樹木が移植された弘前公園。中にはシダレザクラも1本ありました。弘前公園は全国から観光客が訪れる桜の名所。その数約2600本の桜の管理を行っているのが、樹木医の小林勝さんです。弘前公園の桜には老木が多く、ほとんどが樹齢60年以上で、100年を超える樹も多く見られます。

「ソメイヨシノは寿命が短く、50~60年になると老木と言われましたが、今は100年以上の樹も珍しくなくなりました。ただ弘前の場合は、その数が圧倒的に多い。若い樹に負けないくらい元気が良く、見事な花を開かせるのが特徴です」と小林さん。

一般に若い桜は成長に勢いがあり、毎年目に見えて伸びていきます。対して老木は、成長のスピードが徐々に鈍くなっていくそうです。弘前の老木が元気なのは、きちんと手入れが施されているため。管理の特徴は、毎年欠かさず行う剪定と施肥による若返り法にあります。

リンゴ栽培に倣った〝弘前方式〟

〝桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿〟のことわざ通り、元来、桜は切り口から病気にかかりやすいため、大胆な剪定はタブーと考えられてきました。ところが55年前、樹勢が弱っていたシダレザクラに、枝を深く切る強剪定を施したところ樹勢が回復。これを機に弘前公園の桜は剪定されるようになりました。リンゴの栽培技術を参考にした〝弘前方式〟と呼ばれる管理方法です。

「木には枝を切ると植物ホルモンの働きにより、新たに若い枝を伸ばす性質があり、それを利用したものです。切り口から菌が入るのを防ぐため、墨を混ぜた薬剤を塗っています」

この弘前方式により、多くの桜が守られてきました。

「日本最古のソメイヨシノと、日本最大幹周のソメイヨシノは、弘前公園の中でも注目されている桜です」

小林さんには特別な樹がもう一つあります。4年前の大雪で根元から倒れてしまい、あらゆる手を尽くして立て直しを行った、樹齢100年を超えるオオシダレです。

「倒れた理由は雪だけではなく、根っこが腐っていたことにもよります。具合の悪い状態のところに大雪が重なってしまったんです。まさに重症で外科的治療が必要でした」

小林さんは、別の桜の苗木から根っこをもらってつなぐ〝根接ぎ〟という方法を提案。何度か苦境を乗り越え、オオシダレは支柱に支えられながらも、元気に花を咲かせています。

樹の生命力を引き出す仕事

もともとは高山植物に興味があったという小林さん。樹木医になり桜守として弘前公園の管理を続けているのはお兄さんの影響が大きいと言います。

「兄は市役所に勤務し、2年目から公園で桜の管理をしていました。私は種苗会社に勤務した後、公園内の緑の相談所職員として働きました。先に取得していた兄の勧めで、樹木医制度ができた翌年、1992年に資格を取りました」

樹木医とは、樹木の保護・育成・管理や、樹木に関する知識の普及・指導などを行う専門家です。認定試験を受けるには、7年以上の公園緑地などに関する実務経験が必要になります。

現在、弘前公園に樹木医は小林さんを含めて4名。その一人が橋場真紀子さんです。

「弘前公園の桜は子どもの頃から親しんできました。植物と触れ合う仕事を一生の仕事にしたいと樹木医を目指し始めた頃、弘前にも樹木医がいることを知りました。それが小林さんと兄の範士さん。お二人のもとで樹木医としての考え方や植物の見方など多くを学びました」  橋場さんは、現・弘前市みどりの協会の臨時作業員となり弘前公園の植物園で働きながら、実務経験を積みました。

「木の根元を掘って土を入れ替える土壌改良の仕事などもあり、さまざまな経験をさせてもらいました。その間も小林さん兄弟に指導していただき本当にありがたかったです」

弘前の桜を次世代へつなぐ

2006年に晴れて樹木医の資格を取り、橋場さんは昨年、弘前市公園緑地課の職員として採用されました。現在、弘前公園には9名の技能職員と36名の作業員のあわせて45名の現場職員が勤務し、園内の管理を行っています。「チーム桜守」は樹木医の小林さんと橋場さんを入れて3名です。

「最低1日1回は時間を作って園内を見て回ります。デスクワークも多く、土壌改良の結果をまとめたり、病気の治療法を考えたりして、桜の管理にどう活かしていくかも考えます。そして悩んだ時は現場に出ると、手がかりが見つかる場合もあるんです」と橋場さん。

桜守には、実践的技術と論理的知識が必要。歴代の桜守たちが試行錯誤を繰り返し築き上げた管理方法を継ぐ人材を絶やさないよう発足したのがチーム桜守です。

「剪定、施肥、薬剤散布の基本に、積極的な外科的手術や幹から伸びる不定根の保護、土壌改良という管理技術を加えた〝弘前方式〟を理論的に伝えていかなければ」

根底にあるのは美しく咲かせてあげたいという桜への愛情。小林さんの懸命な想いは次の代へ確かに受け継がれています。

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vol.12 2015
(PDF 10.6MB)

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