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トークネットのコミュニケーションマガジン

朝日酒造株式会社 取締役社長
細田 康 氏(ほそだ やすし)

プロフィール
大学卒業後、化学メーカーに勤務。研究者を経て、1995年に朝日酒造株式会社へ入社。2005年に営業部長就任後、取締役営業部長、常務取締役営業部長、常務取締役を歴任し、2012年12月、取締役社長に就任。

朝日酒造株式会社
新潟県長岡市朝日880-1
TEL.0258-92-3181(代)
HP.http://www.asahi-shuzo.co.jp/

味わう人に寄り添い
エピソードが生まれる酒を造る

1830年に「久保田屋」の屋号で創業した、新潟の酒造メーカーの朝日酒造。
全国にファンを持つ「久保田」や「朝日山」など、著名な銘柄を製造する一方で、
文化の発信や地元の自然保護にも取り組んでいます。
新潟が誇る日本酒の蔵元として、地域とともに発展してきた朝日酒造の
社長・細田康氏に、老舗蔵元の挑戦と今後について伺いました。

全国ブランド「久保田」の誕生

創業以来“品質第一”をモットーに、朝日地内を流れる地下水脈の軟水と地元米によって酒を醸してきた朝日酒造の前身の久保田屋の酒は、明治後期に「朝日山」の名前で売られ、地域の人たちに親しまれてきました。さらに、各種品評会でも高い評価を得てきました。1920年に株式会社となった朝日酒造は、「朝日山」の瓶詰め商品の生産を開始して商圏をさらに広げ、新潟県を代表する酒造メーカーに成長していきます。やがて時代は“淡麗辛口”志向へ。1985年、朝日酒造は都市向けの高級酒という位置付けで「久保田」を発売しました。全国ブランドになった「久保田」の誕生前後の時期、朝日酒造は会社として大きく変わる過渡期にありました。

2012年12月に創業家以外で初めて社長に就任した細田康氏は、「当時、久保田を開発するために、それまでの伝統的な酒造りの方法を見直しました。さらに、発売後も商品の安定供給、品質を維持するための体制へと社内改革しました」と話します。

伝統的な日本酒造りは、酒造会社である「蔵元」のところに、農家の人々が農閑期に「蔵人」として酒造りに従事する、季節労働の形で支えられていました。この蔵人の監督者として酒造りの全工程で責任を負い、代々技術を伝承しているのが「杜氏」です。

「季節雇用扱いの杜氏さんや蔵人さんといった、酒造技術者の社員化が実行されました。高い品質の商品を全国に提供するためには、同じ会社の仲間となり、常に目標を共有して仕事をすることが必要だったのです」と細田社長。また、一子相伝という形で伝承されてきた杜氏の技術を数値化して、マニュアルにするという取り組みも行われました。

「過去の技術者が残したデータの分析や毎年の原料の変化に対応した実績データなどを“作業や技術の伝承”と同じように、“判断技術の伝承”が会社には非常に大事な財産になります」

商品の価値を知っていただくために

「久保田」は販売方法も、それまでのスタイルとは違うものでした。「朝日山」は、問屋を通して小売店に渡るのに対して、「久保田」は小売店を選定して直接取引する販売方式を採用。

久保田は『価値を理解した上で購入していただきたい』商品でした。そのためには、お客さまに商品の価値をきちんと説明できる小売店が必要だったのです。

「店員さんからお客さまの手に渡す時、お酒にまつわるエピソードなどの付加価値をつけていただきたいと思いました」

お酒は要説明商品であり、お店で完成するものと言われています。

朝日酒造は2013年、蔵の近くに物販店舗「酒楽(さら)の里 あさひ山」と、飲食店舗「あさひ山 蛍庵」をオープン。2015年には東京・銀座に飲食店舗「久保田」をオープンしました。細田社長は「小売店さんを通してお客さまの反応を教えていただくだけでなく、直接、お客さまの声が聞ける直営店を持つことは大きなメリットだと感じています。メーカーとしては、そこから“知覚されていないニーズ”を掴んで、商品づくりやサービスに反映させていくことが大事です」と話します。

若い世代の社員が活躍できる組織へ

現在、日本酒愛好家の間で、「久保田」を知らない人はほとんどいないと言えるかもしれません。しかし「商品として成功というには、まだ道半ばです。お客さま一人ひとりに“久保田ストーリー”を語っていただけるようになりたい」と、細田社長の理想が広がります。

創業家から経営を引き継いだことに対しては「ある意味カリスマ的なリーダーによる運営から、組織として各部門の社員が参画できる会社になってほしいという思いがあったと理解しています。久保田に変わる新しいもの、あるいは現在の久保田以上の久保田を、今いる世代の社員たちで完成させることが、本当の意味で引き継いだことになると思っています」と話します。

朝日酒造では、杜氏の経験と勘を次の世代に継承するための活動も実施しています。1997年から「酒造り技能伝承システムの構築」として、若手社員だけで酒を造る「教育仕込み」や、全社員を対象に2級酒造技能士取得を目的とした「朝日大学清酒学校」に取り組み、今年からは女性仕込みにも挑戦しています。

地域とともに酒蔵のある里づくり

「“文化を肴に酒を飲む”とは、久保田の生みの親で、当時工場長をしていた嶋悌司さんがよく言っていた言葉です。社屋エントランスホールでは、地域のお客さまとふれ合うコンサートや、イベントなどを定期的に開催しています。また、“見せる蔵”というのも意識的に行ってきたことの一つです。高品質な酒造りに取り組むための設備やシステムが備わった蔵を、ぜひ多くの方に見学していただきたいですね」

酒造りに欠かせない、米と雑味のない水。朝日酒造は、これらを育む里の、環境保護活動にも積極的に取り組んでいます。ホタルが生息する環境を守る “ほたるの里づくり”や、地域のもみじ園の維持ともみじの保護を行う“もみじの里づくり”など、地域の方々と一緒に酒蔵のある里を守っています。これらの活動は、朝日酒造が造る酒を語るのに、欠かせないエピソードとなることを願っています。

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vol.17 2016
(PDF 12.1MB)

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