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トークネットのコミュニケーションマガジン

桜井こけし店

宮城県大崎市鳴子温泉湯元26-6
TEL・FAX.0229-83-3460
HP.http://www.sakuraikokeshiten.com/

豊かな風土が育んだ東北特有の木地玩具

華やかな胴模様に愛らしい表情、どこか素朴な風情が漂うこけし。東北特有の木地玩具で、地域により特徴が異なり、大きく11系統に分けられます。中でも、鳴子系は宮城県の鳴子温泉が発祥地で、「こけしといえば鳴子」と言われるほど有名です。

鳴子こけしは江戸時代末期、器や盆を挽く木地師がわが子の玩具として作り始めたとされ、湯治客の土産物として普及しました。頭と胴を別々に作り、後から首頭部をはめ込む独特の技法を用いるため、頭部を回すと「キイキイ」と音が鳴るのが特徴。肩に段があり、中程でややくびれた胴は太くて安定感があり、菊の花を重ねて描きます。現在、鳴子では20人ほどの工人が、それぞれの家に伝わる技術・技法を継承しながら、こけしを作り続けています。

鳴子温泉駅からほど近い、こけし通りに店を構える桜井こけし店。代々続く木地師の家系で、5代目の櫻井昭寛さんが暖簾を守っています。こけし作りの魅力に触れたきっかけについて、「昭和39年に開催された東京オリンピックの時です。鳴子中学校の生徒が協力し、1万2000本のこけしを各国の選手に贈ることになり、当時中学1年だった自分もこけしの描彩を手伝いました。これが楽しくて」と話します。

高校卒業後、父・昭二氏の下で木地を修行。昭和47年から本格的に描彩を始めました。昭和56年、全国こけし祭りで最高賞の文部科学大臣賞を史上最年少で受賞。その後も同賞を2度受賞したほか、各種コンクールで様々な賞を受賞しています。現在、鳴子を代表するこけし工人として、先代たちの技や心を大切に、独自のこけしを追求しながら、様々な伝統こけしや木地雛、創作こけしなどを制作しています。

継承と探求が生む鳴子こけしの伝統美

こけしの材料となる木は、主にミズキやイタヤなど。樹木の活動が停止する秋に切り倒し、その場に1カ月ほど寝かせて水分を抜きます。伐採した原木を6尺の長さに切り木地置場まで運び、半年から8カ月ほど自然乾燥させ、電動のこぎりで必要な大きさに切り出し、円筒形に荒削りしてロクロにかけられる状態にします。これをカンナで削って頭と胴を別々に作り、トクサやイナクサで磨きをかけた後、ロクロ線を入れた肩の中央部分に穴をあけ、凹部に頭をはめ込みます。形が仕上がったら顔や胴の模様を描彩し、最後に蝋をひいてこけしが完成します。

「その日はいいなと思っても、数日経って見てみると、何か違うと感じるんです」と昭寛さん。その時々の心持ちや筆遣いで仕上がりが微妙に異なり、一つとして同じこけしはありません。イメージどおりに作れない難しさと対峙しながら、無心にこけしの美を探求しています。

3年前、東京や大阪で働いていた息子の尚道さんが跡を継ぐ決心をし、鳴子に戻ってきました。現在、木地修行に励んでいるほか、地元や海外で様々な活動を展開しています。平成28年秋には、東北各地のこけし展示や雑貨販売、イベントなどを開催する「こけし堂」をリニューアルオープン。平成29年1月には、パリで行われたインテリアデザインの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に初出展し、海外法人との取引を始めました。また、9月に開催される同見本市に再度出展する予定もあり、さらなる販路開拓を目指します。

伝統を継承しながら挑戦しつづける姿勢は、尚道さんに受け継がれています。

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vol.20 2017
(PDF 10.2MB)

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