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トークネットのコミュニケーションマガジン

仙台フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター
西本 幸弘氏(にしもと ゆきひろ)

[ プロフィール ]
札幌市出身。6歳よりヴァイオリンを始める。東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。その後、英国王立北音楽院で首席栄誉付ディプロマ取得。同音楽院よりバルビローリ賞をはじめ、多くの褒賞を受賞。英国を拠点に活動し、海外オーケストラとの共演や、ザルツブルクをはじめ世界各地の音楽祭で演奏、著名な演奏家との共演も数多い。2010年に帰国。2012年に仙台フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター、2018年に九州交響楽団コンサートマスターに就任。現在、仙台国際音楽コンクール企画推進委員会委員、ふもとのこどもオーケストラ音楽監督、Mt.FUJI交響楽団ミュージックアドバイザーも務める。 令和元年度宮城県芸術選奨新人賞受賞(音楽部門)。

奏者と観客の一体感が魅力
音楽でコミュニケーション

2012年より、仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターとして活躍する西本幸弘さん。
楽団の演奏会のほか、自身のリサイタルツアーやボランティアなどのアウトリーチ活動を精力的に行っています。
ヴァイオリンを始めたきっかけ、コンサートマスターとしての役割、仙台フィルの魅力、音楽への想いなどについて伺いました。

顔を見て、音を聴くコンサートマスター

「6歳の時、オーケストラを紹介したテレビ番組を見て、コンサートマスターの所作や、チューニング(音合わせ)をしている姿がとても格好良いなと思ったんです。その時のコンマスがヴァイオリニスト。憧れてしまいました。それで小学1年生の作文で、将来の夢はコンサートマスターと書いていました。大学受験は一度失敗しましたが、大学浪人時代のホテルマンのアルバイトは、人とのコミュニケーションに役立っています。札幌の大通公園で路上ライブをしたこともありますが、いろいろな経験は、自分にとって必要なことだったと思います」

子どもの頃の夢を叶えた西本幸弘さんは現在、仙台フィルハーモニー管弦楽団と九州交響楽団、両楽団のコンサートマスターを務めています。オーケストラの演奏を取りまとめる役割を担うコンサートマスターは、第2の指揮者とも呼ばれます。西本さん自身は、その役割をどのように捉えているのでしょうか。

「コンマスの席は、客席から見て指揮者の左隣りです。この席で、オーケストラが良い演奏をして、お客さまも楽しめる空気感を作り出せるように心掛けています。その一つが、チューニングの際にメンバー全員の顔を見ることです。表情からその日の調子を読み取れることもあるので、リハーサルでも本番でも必ずしています。それによって演奏の方向性が決まったり、ひらめいたりします」

オーケストラの無言のコミュニケーションによって奏でられた音楽が、聴く側であるお客さまとのコミュニケーションにつながっていくようです。

一体感を味わえる演奏を心掛ける

ゲストコンサートマスターとして仙台フィルに参加した後、2012年に正式に就任した西本さん。当時27歳で、最年少のコンサートマスターでした。

「夢が叶った喜びと不安が混在し、とても印象に残っています。仙台フィルは、それぞれの個性が活きているオーケストラで、緊張感のある時の研ぎ澄まされた音がすごく魅力的な楽団です。音にもスピード感があります。また、九州交響楽団は、先輩方が卒業して若いメンバーが多いオーケストラです。コンサートマスターとしての立ち位置は、円滑に進むようにリードする役割ですね」

地域性の違う二つの楽団を兼任するコンサートマスターとして活躍する西本さん。料理が趣味で、音楽と料理は似ているといいます。

「歴史や伝統などその地域に根差した料理があって、それを誰もが作れるように残したものがレシピだと思うのです。音楽で言えば、楽譜はレシピみたいなもので、作曲家の想像力の中から生まれたものを楽譜として残し、音楽家が作曲家の意図を汲み取り、どう演奏するかというのが音楽です。だから演奏する人によって印象が違うわけです。料理もレシピが同じでも作る人によって味が違いますよね」

コンサートでは、楽譜通り演奏するだけでなく、その時の会場やお客さまの雰囲気、奏者の調子を感じながら、弾き方の強弱など、少しずつ加減を調整しているそうです。

子どもたちに音楽の楽しさを伝える活動

2010年に英国から帰国し、活動の拠点を日本に移した西本さんは、音楽の可能性を追求するコンサートプロジェクトを始動させました。教育機関や各種施設での訪問ボランティア演奏、復興支援など、アウトリーチの活動に精力的に取り組んでいます。

「学校や施設などを訪問するアウトリーチの活動は音楽家、ヴァイオリニストとしての大きな軸の一つです。仙台フィルに入って、被災地のオーケストラのコンサートマスターとして何ができるかを考えた時、やっぱり音楽でお役に立ちたいと思いました」

帰国後、出身地の札幌、ヴァイオリンを始めた御殿場、現在の活動拠点の一つである仙台と自身のゆかりの3都市で開催するツアー『リサイタルシリーズ』と同時に、子どもたちと過ごす音楽のワークショップを年に数回開いています。

「子どもたちの前で演奏して、その曲からイメージする絵を画用紙に画いてもらうというワークショップでは、子どもたちの絵から影響を受けて演奏が変わったりすることもあります。また、中学校や高校の吹奏楽部、合唱部の生徒たちには、音で感情を表現したり、コンサートの聴き方などについてのワークショップを行っています」

仙台と九州でジュニアオーケストラの指導もしている西本さん。子どもたちの「何かを発見できる心」を育てていければという想いから活動を続けています。

さまざまな音楽活動で人や地域がつながる

西本さんはオーケストラの活動のほかに、ラジオ番組のパーソナリティなども務めています。2017年から続くエフエム仙台のラジオ番組『TOHKnet Sound Pizz.』は、「高校時代に組んでいたバンドで演奏した曲など、クラシック以外にさまざまなジャンルの曲を楽しめ、自分にとっても幸せな時間です。東北や宮城県以外の方も聴いてくださっていて、番組の中で音楽を通していろいろな方とつながることができる、自分の理想形に近い番組です」と話しています。

番組は、リスナーの質問などに答えるコーナーもあり、ヴァイオリニスト、コンサートマスターとしての経験や視点から届けられる音楽やメッセージが、オーケストラに興味を持ち、コンサートに足を運ぶきっかけにもなっているようです。

西本さんは、生の演奏会でもラジオ番組でも発信と受信をしながら、常にポジティブに変化を楽しんでいます。

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(PDF 7.0MB)

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