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トークネットのコミュニケーションマガジン

スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチーム リーダー
大森 梨江(おおもり りえ)

プロフィール
大森梨江(おおもり りえ)
福島県双葉町出身。2004年常磐音楽舞踊学院入学。第40期生フラガール。2009年サブリーダー、2012年6月リーダーに就任。ソロダンサーに与えられるハワイアンネームは「モアナ梨江」。モアナはハワイ語で「大きな海」の意味。

スパリゾートハワイアンズ
福島県いわき市常磐藤原町蕨平50
TEL.0246-43-3191(代表)
HP.http://www.hawaiians.co.jp/

前に進む決意とパワー
踊りに込めて思いを届ける

福島県いわき市、常夏の楽園「スパリゾートハワイアンズ」でダイナミックな踊りと素敵な笑顔で観客を魅了するフラガール。
チームのまとめ役であるリーダーの大森梨江さんに、東日本大震災のこと、これからの思いなどを、営業部の多田祥恵が伺いました。

私たちにできること

笑顔を絶やさず、ダイナミックかつしなやかな踊りで観客を魅了するスパリゾートハワイアンズのフラガールの皆さん。その華やかなステージの裏には、たゆまぬ努力とチームの絆がありました。フラガール36名のまとめ役としてチームを率いるリーダーの大森さんに「絆をつなぐ」について伺います。

東日本大震災で大きな被害を受けられたと思いますが、その後すぐに「フラガール全国きずなキャラバン」を行うなど、復興に向けた活動を始められました。当時はどんな思いを抱いていたのでしょう。

「3月11日のあの時間、私たちダンシングチームは昼のショーが終わり、夜のショーに向けて控え室で準備をしていました。地震後はお客さまとともに全員無事に避難しましたが、施設の被害が大きく全館休館となり、1カ月ほど自宅待機になりました。最初の1週間くらいは水道も電気も使えない、電話もなかなか繋がらない。生活するのがやっとという状況でした。その後、少しずつ連絡がとれるようになると、メンバーから『何かできることはないか』『避難所に行って踊りたい』という声が集まるようになりました。そこで実現したのが全国キャラバンです」

4月22日にようやくレッスンを再開。一人も欠けることなく集まりました。

「こんなに長い時間会わないということがなかったので、久しぶりにメンバー全員が揃って再開できたことは本当にうれしかったです。

全国キャラバンへ

チームの中には避難所生活を経験したメンバーも。大森さん自身も福島第一原発から2.2キロの双葉町に住んでいました。当時は“被災した人”という目で見られるのが嫌だったそうです。

「全国キャラバンは5月3日、いわき市内にある避難所での慰問公演からスタートしました。避難所の状況を身近に感じていただけに、踊りたいという気持ちと、喜んでいただけるだろうかという不安とで、複雑な思いがありました」

けれど、いざ行ってみると逆に励まされ、大きく背中を押されたと言います。

「驚くほどたくさんの温かい言葉をいただきました。『再開したら必ずハワイアンズに行きます』と言っていただき、自分たちにできることをしっかりやろうと決意しました。双葉町の人たちが避難していた埼玉県加須市の避難所を訪れた際も、涙を浮かべながら『ありがとう』と言ってくださって。フラガールだからこそ伝えられることがあるんだと思いました。そこでようやく”被災した人”という目で見られることに対する思いがふっきれましたね」

全国キャラバンは約半年間、福島県や東北各県の被災地、長野県北部大地震の被災地、九州や中国地方の炭鉱ゆかりの地と26都府県、そして韓国ソウル市の125カ所を巡り、公演回数は247回に上りました。こうした活動は高い評価を得て、2011年度の観光庁長官表彰を受賞しました。

一致団結の精神で

常磐音楽舞踊学院の最高顧問カレイナニ早川先生が言われた「舞台の上では、どんなにつらくても笑顔を忘れないこと。そして、熱く、美しく、希望を持って、自分の思いを伝えてください」の言葉どおり、全国を笑顔で駆け巡った皆さん。苦労も多かったのではと想像します。

「会場の大きさに合わせてダンサーのポジションを決めていきます。私は当時サブリーダーで、前リーダーがその場でぱっと判断してまとめていくのをサポートするという立場だったので、できるだけリーダーがスムーズにできるようにと心がけていました。お互い思いやりをもって一致団結することで、さらに家族のような絆が生まれたのも大きな財産でした」

踊る場所を失ったフラガールたちが踊る場所を得たことも心の支えになりました。ハワイアンズでお客さまに会えることを願って走り続けました。

そうした経験を経て、2012年6月リーダーにとのお話をいただいたときは、どんな気持ちだったのでしょう。

「プレッシャーの一言でした。みんなをまとめていくようなタイプではないので、私には務まらないのではと思いました。でも、前リーダーから『自分らしく、自分のペースでいけばいいから』と言われてラクになりました。焦らず、少しずつ前に進めばいいんだ、いい経験、いい試練になるはず、とプラスに考えるようにしました」

夢をカタチにする力

リーダーになって9カ月。大森さん自身、少しずつ変わってきたと言います。

「精神的に強くなりましたね。まだまだ至らないところはたくさんありますが、足りない部分は日々学びながら、という感じです。いろいろな経験をして絆がより深まりましたし、仲間がいるから頑張れます」

踊り以外の仕事も増えたという大森さん。震災復興のシンボルとして取材されることも多く、初めの頃はとまどってばかりだったそうです。

「避難所の慰問公演のときは、どうしてこういうところを撮るんだろうという気持ちの方が強かったですね。でも取り上げていただくと大きな反響があります。私たちが発信することで皆さんに知ってもらえる。福島の今を理解してもらうことで、それが復興に繋がればいいなと思っています。自分たちが経験したことをカタチに残して、次の世代へ伝えていくこともできますし」

復興のためにできることがあるのがうれしい、と話す大森さんの瞳は力強く輝いていました。小学1年生の頃夢見た「フラガールになる」という思いを持ち続け、成し遂げた大森さんのこれからの夢とは。

「皆さんから『いわきが元気にならないと私たちも元気になれない』という言葉をたくさんいただきました。また猛暑の中、足を留めて見てくださったお客さまのことは忘れられません。今回のことで多くの経験をさせてもらったので、恩返ししていきたいですね」

未来をあきらめない

皆さんからもらった心の絆や仲間の絆を繋いで次の世代へ渡せるように、感謝の気持ちを忘れずに一日一日を大切に踊り続けていきたい、と話す大森さんの言葉が印象的でした。

最後に同じ女性として伺いたかったのは、美と健康の秘訣。ショーはもちろん、練習中もインタビュー中も常に素敵な笑顔を絶やさない大森さんの元気の源を教えていただきました。

「私たちの仕事は体力勝負です。特別なことはしていませんが、しっかり食べて、しっかり休んで、しっかり遊ぶことでしょうか」

一昨年10月(2011年10月)に部分営業再開、昨年2月(2012年2月)に全面営業を再開し、連日多くのお客さまで賑わいを見せるスパリゾートハワイアンズ。今年1月からの「グランドポリネシアンショー」(夜のショー)のテーマは「イムア・未来へ」。イムアとは、ハワイ語で「前進」という意味。「福島」を思い、復興に向かって未来をあきらめずに前進していこうという願いを込めたステージです。

「被災した皆さんが、安心して生活できる日がくることを願っています。いわきは相双地区の中で警戒区域に一番近い場所です。私自身もここでバラバラになった友人と再会したように、スパリゾートハワイアンズが笑顔で再会できる場所になればいいなと思っています。また、福島は浜通り、中通り、会津地方とそれぞれに自慢できるところがたくさんあります。ぜひ福島に足を運んで、福島の今を感じてほしいですね」

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(PDF 9.4MB)

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