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トークネットのコミュニケーションマガジン

株式会社小松煙火工業 代表取締役社長
小松 忠信氏(こまつ ただのぶ)

[ プロフィール ]
大仙市(旧大曲)出身。
1986年から花火の仕事に携わる(花火歴35年)。
株式会社花火創造企業代表取締役社長(兼務)。
大曲の花火協同組合代表理事。
一般社団法人日本花火推進協力会理事。

地域が誇る文化を後世へ
「大曲の花火」とともに歩む

毎年8月、全国の花火師たちが秋田県大仙市に集い、技を競う
「全国花火競技大会」。“花火の街”を文化、観光、経済などの面から
盛り上げようと、2014年に花火産業構想が策定されました。
活動の立役者でもある「小松煙火工業」社長の小松忠信さんに、
「大曲の花火」の魅力や、文化継承の思いについて伺いました。

花火師の聖地 「大曲の花火」の歴史

小松煙火工業は1885年、仙北郡宮林新田村(旧大曲)に煙火製造業として創業。5代目社長の小松忠信さんに、大曲の花火発祥について伺いました。

「秋田県には現在、花火業者が9社あり、そのうち8社は県南に集中しています。秋田県南は藩政時代、優れた鉄砲隊を持つ佐竹藩が常陸から国替えをさせられた地です。諸説ありますが、火薬の扱いに慣れている人が多い土地柄だったことが、大曲の花火発祥と関わりがあると言われています。この地域は、神社の奉納花火はもちろん、入学式や卒業式でも花火が打上げられるほど、花火文化が定着しているんです」

毎年8月に大仙市で開催される「全国花火競技大会」は1910年、東北・新潟の花火師を対象にした「奥羽六県煙火共進会」として開催されたのが始まりでした。

「コンクール形式での開催は、日本の花火行事の中でもほとんど例がなく、全国から多くの花火業者が集まりました。ここまで認知されるようになったのは、1964年に大会実行委員長を務めていた佐藤勲氏によって、『創造花火』が発案されたことも大きいですね。これは『花火は必ずしも丸でなくて良い』という発想で、それまで美しいまん丸を追求していた花火職人たちからは、反発が多かったようです。しかし、我々に新たな挑戦をさせることで、結果的に新しい形や色を探求し、技を編み出すきっかけになりました」

四季を通して楽しめる“花火の街”

創造花火によって、「全国花火競技大会」の人気はさらに高まりました。1967年、会場の雄物川の河川改修工事が実施され、川が蛇行している部分を真っ直ぐに整備。大会を開催する環境も良好になりました。
「今の観覧席に当たるエリアが整備されました。改修によって花火を打上げる場所と観覧する場所が、どちらも広く確保できるなど環境整備が進んだことも追い風となったようです」

現在「大曲の花火」には、8月に開催される「全国花火競技大会」のほかに、5月の「春の章 世界の花火・日本の花火」(今年は開催中止)、10月の「秋の章 劇場型花火」、3月の「冬の章 新作花火コレクション」があり、四季それぞれに特徴のある花火を楽しめます。

「春の章は、通常は、海外の花火業者を招いて世界と日本の花火文化の違いをご覧いただいています。秋の章は、日本の伝統文化や映画作品などとのコラボレーション企画です。冬の章は、若手花火師のコンクールで、発数は少ないですが斬新な光の演出を取り入れた、見応えのあるものになっています」と小松さん。

「花火産業構想」で文化継承と地域活性

そんな“花火の街”を文化、観光、経済などの面から盛り上げようと、2014年に大仙市、大曲商工会議所、大仙市商工会により「花火産業構想」が策定。翌年、株式会社花火創造企業が立ち上げられ、小松さんは代表取締役社長に就任しました。

施策の一つである花火の文化価値向上については、花火伝統文化継承資料館「はなび・アム」が2018年にオープン。花火の歴史や製造方法、鑑賞の仕方を学ぶことができる常設展示のほか、市民グループ「花火伝統文化継承プロジェクト」と協働で収集・保存している花火に関する資料の企画展示があります。

「大曲の花火を打上げる時は、独特な呼出しの掛け声があります。地元の子どものほとんどが体験から知っていますが、何となく知っている花火や故郷の行事の理解を深めることができる施設です。展示物は定期的に入替え、常に、新鮮な印象を持ってもらえるように工夫しています」

花火職人の人材育成や後継者確保については、他の業界ほど切実ではないと言います。

「大仙市には、花火師を目指す人たちが県外からも訪れます。花火競技会の作品を観て、表現したい花火があるのでぜひ携わりたいという人が後を絶たない状態です。大曲の花火には、そんな憧れを抱かせる何かがあるんですね。私自身、学生時代に海外でうちの花火を観て、外国の方が拍手しながら喜んでいるのを見た時に、家業を継ぐことを決めました」と小松さん。

打上げ花火に込めた花火師の思い

昨年、新型コロナウイルスの影響で、全国の花火師たちの競演が楽しめる夏の競技大会は中止されました。戦後では水害に見舞われた1947年以来のこと。

「そもそも、花火大会や花火行事を開催するのは何のためか。私は地域活性化であると思っています。はじめは関係者のほとんどが、やむを得ないと思っていたのですが、実際に中止してみると、地域の経済的な打撃は相当大きく、とても驚きました」

今もコロナ禍が続く中、小松さんたち花火関係者や地元自治体は、さまざまな取組みを模索中です。

「夏の全国花火競技大会では、距離を保つため桟敷席数の縮小、露店出店の中止などを考えています。また、イベント以外でも、打上げ花火が地域や人々の癒しや希望につながればと、自宅や職場から楽しんでいただく試みも行いました。観客を魅了するショーとしての花火を打上げることが多かったですが、花火で元気や希望を持ってもらうためにも、心を込めてお届けしたいです」と話します。

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