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トークネットのコミュニケーションマガジン

Berry’s Garden 代表
景井 愛実氏(かげい まなみ)

[ プロフィール ]
福島県伊達市生まれ。高校卒業後は化粧品の販売やアパレルの分野でキャリアを重ね、2007年に実家が果樹農園を営む夫と結婚。東日本大震災をきっかけに農水省「農業女子プロジェクト」に参加し、2017年に起業。現在は「Berry’s Garden」代表として福島県産の果物を使った加工商品開発や、観光農園を通じて農産物の魅力を発信している。

[オフィス]
〒960-8061 福島県福島市五月町1-11

畑の魅力や価値を発信し
農業の課題解決にチャレンジ!

桃やりんごなど、四季折々でさまざまな果物が生産されている福島県。
「くだもの王国」福島で、結婚を機に農業デビュー。
起業した後に、フードロス問題に対する取組みを行っているのが「Berry’s Garden」代表の景井愛実さんです。
女性目線の商品プロデュースや、ありのままの畑の魅力を伝える景井さんの挑戦について伺いました。

結婚、震災を機に福島の農業と向き合う

「結婚するまで、農業との接点はほとんどありませんでした」と語る景井さんは、福島市にある農園「Berry’s Garden」を営む女性就農者です。以前は美容業界やアパレル業界で働いていましたが、桃やりんごを生産する果樹園で、「農家のお嫁さん」として農作業を手伝うようになりました。しかし、その頃はまだ農業への熱意はなかったと話します。大きな転機となったのは2011年3月11日の東日本大震災。そして、津波による福島第一原発事故でした。

「風評被害によって福島の農家はこれまでにない苦境に立たされました。それと同時に応援してくださる人も多く、私は改めて福島の農産物の魅力を実感したのです。もっと福島の農業の可能性を広げていきたいと考え、農林水産省が主催する『農業女子プロジェクト』に参加することにしました」

「農業女子プロジェクト」で農業に従事する女性たちと情報交換や交流を行ったことで、自分のやりたいことや事業のアイデアが生まれていったという景井さん。2017年に起業し、「Berry’s Garden」を立ち上げました。

廃棄されてしまう規格外の果物たち

景井さんには、農業を始めてから常に一つの疑問がありました。形や色がよくないもの、いわゆる“規格外”の農産物は商品にならないため、廃棄されてしまう現状があります。見た目が少し整っていないだけで品質に違いはなく、農家が丹精込めて育てたものに変わりありません。

「私は『Berry’s Garden』を立ち上げる前に、スムージーアドバイザーの民間資格を取得しました。果物はやっぱり生のままが一番おいしいので、スムージーなら規格外の果物を生のまま手軽に食べることができます。また、美容関係の仕事をしていたこともあり、美容・健康効果が期待できるスムージーは女性たちに受け入れられると考えました」

景井さんはスムージーのワークショップやイベント出展などを通じて、畑での栽培や収穫もあわせて、福島の農産物の魅力をPRするようになりました。

女性視点で多彩な加工品をプロデュース

一方で、スムージーは目の前に人がいるとき、または農産物の収穫時期に限定されることや、長期保存が難しいことが課題でした。そこで景井さんは、「Berry’s Garden」を立ち上げたタイミングで加工品にも挑戦。なるべく長期保存ができ、遠方の人にも届けられるドライフルーツから商品化をスタートさせます。福島県産の桃やりんご、熊本県のみかんを使った「ツリーフルーツ」は、そのまま食べても、紅茶に入れたりパンケーキにのせてもおいしい主力商品となりました。妊娠中でもお酒を飲んでいる気分を味わいたいという女性の声に応えた「りんご農家のスパークリングボトル」、忙しい女性が夜にほっとひと息つけるように開発された「りんご農家のホットワインの素」など、ドライフルーツを使った加工品を次々とプロデュース。女性を中心に人気が広がっていきました。

加工品を手掛けたことで、流通の仕組みについても学んだ景井さん。フードロスは畑だけではなく製造過程や販売店、食卓でも発生することを知り、畑のロスだけを解決しても根本的な解決にはつながらないと気づきます。

「フードロス問題の答えはどこにあるんだろう、とずっと考えていました。そんなとき、ご縁があって桃の畑の管理・耕作を紹介されました。ぜひチャレンジしてみたいと思い、2020年9月に観光農園として畑を借り、桃の栽培を開始しました」

ありのままの魅力をたくさんの人に伝えたい

景井さんは、手伝いとして作業していた頃には想像できない、自分が責任を持って管理しながら畑を耕作する大変さを痛感したと話します。同時に、フードロス問題を解決するヒントは畑にあるのではないかと考えるようになります。

「実際にお客さんに来ていただくと、『これはとてもおいしいので見た目が悪くても大丈夫』、『果物が鳥に食べられているのもかわいい』と、自分で納得したうえでお持ち帰りいただくので、規格外という概念がなくなるんです」

自然の仕組みを理解することで、スーパーに行ったときに規格外の農産物も手に取るようになり、食卓でも変色した農産物を捨てずに、最後まで食べきる工夫をするようになります。畑に人を呼ぶことはフードロス問題への効果的なアプローチになると確信した景井さんは、「畑ありのままプロジェクト」を立ち上げます。これは、色や形にとらわれず、ありのままの農産物を多くの人に見たり味わったりしてもらうことで、フードロスを解消していく取組み。パートナーやサポーターを募り、収穫祭イベントの開催や、畑で獲れた“ありのまま”の桃の自宅配送を行っています。

「まず畑に来て興味をもってもらい、『自分も畑を持ってみたい』という方が増えたら嬉しいですね。自分で苦労して作ったものを捨てるという発想は生まれませんし、フードロスだけではなく就農者減少の課題も解決していければいいなと思っています」景井さんの果物を愛する取組みは続きます。

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(PDF 4.3MB)

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