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トークネットのコミュニケーションマガジン

株式会社小友木材店 代表取締役
小友 康広氏(おとも やすひろ)

[ プロフィール ]
花巻市生まれ。大学卒業後は東京の現在のスターティアホールディングス株式会社に入社。
2011年に子会社の現在のクラウドサーカス株式会社の取締役に就任(現職)。その後地元へ戻り、2014年に小友木材店の4代目として就任(現職)。

「世界一カッコいい」木材店を目指して
木材×体験で新たな価値を創造

岩手県花巻市で、郷土文化をモチーフとした木製玩具の「遊び場」を子どもたちに提供している「花巻おもちゃ美術館」。
運営を担うのは、明治創業の地元の「小友木材店」です。
その4代目である小友康広さんに、木材と体験価値を結びつける事業のあり方について伺いました。

木材×体験を提供する「花巻おもちゃ美術館」

体験型木育施設「花巻おもちゃ美術館」は、2020年、マルカンビル2階にオープンしました。運営会社である小友木材店の小友康広さんに、設立に至った経緯を伺いました。

「2014年に家業の木材店を継ぐことになったとき、新たなコンセプトを『世界一カッコいい』木材店にしたいという思いがありました。具体的に思い描いていたのは、木材を伐って売るだけではなく、木材を通じた体験を提供することで、本来の価値を何倍にも高めるようなビジネスのあり方です。2017年に、たまたま所属していた木材協会の視察で『東京おもちゃ美術館』を訪れました。そこには木製の玩具や遊具が置かれ、まさに体験価値を提供する空間でした。しかも沖縄県国頭村にも姉妹館があり、更に山口県長門市や秋田県由利本荘市などにも展開予定と聞き、当社が目指すビジネスモデルとして、大きな魅力を感じました」

小友さんは同時期にマルカン百貨店の建物を引継ぎ、地元の人々や観光客から人気のあった大食堂の営業を復活させました。長く愛されていた元百貨店の建物は、おもちゃ美術館を設立する場所として最適だったと話します。

花巻おもちゃ美術館の特徴は、岩手や花巻の自然と文化を感じさせる空間です。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出てくるメガネ橋や鉄道モチーフのおもちゃが並ぶコーナー、八幡平の白樺林、花巻温泉を模したコーナーなど、地元の魅力を体感できる仕掛けが盛りだくさん。玩具だけでなく内装にも随所に岩手県産の木材が使われています。

「おもちゃ美術館は、ミュージアムといっても『どんどん触って学ぶ』ことがコンセプトです」来場者の多くは親子連れですが、懐かしい玩具も揃っており、孫を連れた祖父母世代も訪れます。

事業継承を視野にまずはIT企業に就職

全国屈指の多樹種地域である岩手県で、1905年に創業した小友木材店。幼い頃から自営業の友人が多かった小友さんにとって、家業を継ぐことはごく自然な流れでした。

「家を継ぐ前に同業他社に勤める人は多いですが、私はむしろ業種は問わず、今伸びている業界にたくさんのヒントがあると思い、大学卒業後はITベンチャー企業に就職しました。そこでは基本的に電子ブックのソフトの販売営業を担当しBtoBの営業スキルを学びました。実家を継いだら絶対に営業力は必要です。もともと営業が苦手だったので、苦手を克服できたことは大きな財産です」

積極的に開発側とも関わりながら営業活動を行い、営業成績を高めてきた小友さん。その業績が評価され、2009年に子会社の役員に就任します。その後、2014年に小友木材店を継ぐことになりますが、IT企業の取締役も兼任する形で東京と岩手の二拠点生活を始めることになりました。コロナ禍前からリモートワークを活用し、現在も二拠点で仕事に邁進しています。

他業種での経験を生かし「共感」の輪を広める

小友さんが営業職で培った経験は、家業を継いでからも多くの場面で生きています。

「営業での経験を生かし、新しいプロジェクトを始めるときには共感とスピード感を大切にしています。花巻おもちゃ美術館は、構想から2年ほどで開業しました。よく『たった2年で?』と驚かれますが、私としては、『2年もかかった』という印象です。ITのプロダクトは半年に1商品リリースするのが当たり前なので、速度感や失敗に対する許容の素地ができているんです。とにかくスピード感を持って提案し、共感が得られた時点で形にしていく。スタッフの『やりたい』という気持ちも大事にしています」と小友さんはスタッフを信頼し、事業を預けるというスタンスです。事業を支えてくれる仲間を大切にすることで、共感の輪はどんどん広がっていきます。

「おもちゃ美術館には、社員の他に144名もの『おもちゃ学芸員』と呼ばれるボランティアが在籍しています。美術館のあり方に共感し、2日間の有料講習を受講していただいた方々。子どもは年齢が上がると今まで遊んでいなかったおもちゃに手を伸ばしたり、同じおもちゃなのに遊び方が変わったりするので、年齢を見ながら『次はこういう遊びをしてみない?』と声をかけたり、お母さんが忙しそうにしていたら手伝ってあげたり…、おもちゃ学芸員の皆さんは、この空間になくてはならない存在ですね」

自分の「好き」を信じ挑戦を続けたい

木材産業が抱える課題を明確にし、「6次産業×体験販売」に注力している小友さん。「花巻おもちゃ美術館」を例とする新たな可能性に次々と挑戦しています。その上で大切にしている考えは、「誰かのためではなく、自分の楽しいこと、好きなことを信じて追求していくこと」だと話します。

「まずは自分が楽しいと感じるかどうか、それに対して地域の皆さんから共感を得られることが一番です。そうでなければ、いつか無理が生じてしまいます。1円でも損をしたらダメだという製造業マインドは持たず、利益の3分の1は投資と考えて、失敗を恐れず挑戦し続けていきたいです。」

“世界一カッコいい木材店”という大きな目標を掲げる小友さんは、目を輝かせながらそう語ります。

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(PDF 4.6MB)

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