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トークネットのコミュニケーションマガジン

ヤマガタデザイン株式会社 代表取締役
山中 大介氏(やまなか だいすけ)

[ プロフィール ]
東京都生まれ。大学卒業後、大手不動産会社で大型商業施設の開発・運営に携わる。2014年、転職を機に山形県鶴岡市に移住し、同年8月「ヤマガタデザイン株式会社」を設立。鶴岡サイエンスパークの開発を担い、2018年にホテル「SUIDEN TERRASSE」、児童施設「KIDS DOME SORAI」をオープンする。有機農業を軸とした事業や人材紹介事業なども展開している。

世界が注目する地方都市・庄内で
次の世代につなぐ街をデザイン

バイオベンチャーが集う「鶴岡サイエンスパーク」の開発を担い、
地方創生のモデル企業として注目を集める「ヤマガタデザイン株式会社」。
代表取締役を務める山中大介さんが思い描く街づくりは
子どもも大人も、未来に希望を持てる社会を実現すること。
そのために、どのような事業が展開されているのか伺いました。

街づくりで社会に貢献「ヤマガタデザイン」

2001年、慶應義塾大学先端生命科学研究所(慶應先端研)の誘致・開発によってスタートした鶴岡サイエンスパーク。資源・環境問題の解決、医療の進歩、応用食品の開発などに貢献する、最先端のベンチャー企業が集まり、世界から注目されています。

山中大介さんは、慶應先端研の冨田勝所長に声を掛けられたことがきっかけで、それまで縁のなかった山形県庄内地方に興味を持ち、移住を考えました。

「冨田所長は、高校時代からの親友の父親で、私にとっては第2の師匠みたいな方です。もっと社会に貢献できる働き方があるのではないかと模索していた時に、慶應の先端研から生まれたバイオベンチャー企業のスパイバー(株)を紹介いただいたんです。それがきっかけで入社を決めて移住しました」

しかし、スパイバーに入ったものの「自分自身が何か価値を生み出せるのは、もう少し先になるだろうと考えていた」という山中さん。一方、鶴岡市はサイエンスパークの未利用地、14ヘクタールの開発をどうするかという街づくりとしての課題を抱えていました。山中さんは前職の経験を活かしてこの開発を引継ぐ決断をしました。

「不動産会社で主に商業施設のショッピングセンター開発に携わり、開発のノウハウはありましたので、ぜひチャレンジしてみたいと思いました」

山中さんは2014年8月、街づくりに取組む「ヤマガタデザイン(株)」を設立しました。

行ってみたいホテルを庄内地方につくる!

「最初に取組んだのはホテル事業です。地域活性化などの課題を解決する際、最も重要で着手しやすいのがホテル。外から人を誘致してくるという観光の領域は、地域の収益につながります。ところが、調査会社に依頼したら、この地にリゾートホテルは成立しないという結果が出たのです。庄内地方はインフラが不便で、こういう所に誰が来ますか?ということでした」

それでも、ホテル建設を諦めなかった山中さんには、培った経験と街づくりに対する熱い思いがありました。

「市場価値のある所に売れるモノを作り、認知度向上を図っていくマーケティングの理論では、庄内地方に魅力はないかもしれない。しかし、自然豊かな地方都市、美しい田園風景など庄内のイメージアップを図る、ブランディングの手法で共感を得られれば、事業の可能性はあると思いました」

そのブランディングを形にしたのが、田んぼに浮かぶホテル「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」です。水田と木造建築の調和を図るというコンセプトに共感した世界的建築家、坂茂氏が設計を担当し、2018年9月にオープンしました。「スイデンテラス」は、ライブラリーやレストランなど共用スペースを地域に開放し、宿泊者だけでなく地元の人たちが自由に利用できる場所になっています。

「当初、農地転用したのになぜ田んぼをつくるのかと言われたり、田んぼの上にホテルをつくっても誰も来ないよと呆れられたりしました。しかし、開業して結果を出すことで、応援してくれる人も増えてきました。地域の方々や旅行者が訪れ、ホテルから眺める田園風景を喜んでくれることが嬉しいですね」

子どもが夢中になって遊べる環境をつくる!

もう一つ、山中さんがつくりたかったものが、全天候型の児童施設「キッズドーム・ソライ」。

「庄内地方は雪が多く、冬になると思い切り動いて遊べる場所が少なくなります。ホテル同様、坂さんの設計で木の温もりが感じられるアクティブな遊び場をつくることができました」

県外からの利用も多い施設は、遊具がすべて木造で、傾斜が印象的な「アソビバ」と、さまざまな工作道具が揃い、モノづくり体験ができる「ツクルバ」で構成され、親子で楽しめるのが特徴です。

「スイデンテラスと合わせて、エデュケーションツアー(体験型教育旅行)のような切り口で利用されることもあり、予想以上に好評です。実は街づくりにおいて、最も大事なことは教育だと考えています。企業として利益を上げながら、いかに子どもたちが夢中になれる体験や、学べる環境を提供できるか。私たち自身の課題でもあります」

一次産業は、地方都市の街づくりのカギ

ヤマガタデザインが街づくりを考える上で、常に念頭においているのが地域の農業です。

「持続可能な農業を考えた場合、有機農業は非常に合理的だと考えています。私たちは『SHONAI ROOTS(ショウナイルーツ)』というブランドを立ち上げ、地域の生産者の皆さんと取組んでいます。また、鶴岡市からの委託を受けて、有機農業を中心とした農業経営者育成学校(SEADS)を運営しています」

ホテル、教育、農業生産、人材育成など、さまざまな事業を展開し、街づくりを進めるヤマガタデザイン。

「地域の魅力を徹底的に深掘りして、地方都市が持続する仕組みを創出することが私たちの役割です。庄内での取組みがモデルケースとなり、ほかの地方都市の課題解決にまで展開することを願っています」

今後は林業や漁業など、一次産業の深掘りも考えているという山中さん。街づくりの挑戦はまだまだ続きます。

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(PDF 7.5MB)

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